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相続コラム

たかこサンの相続コラム『相続放棄後の管理責任』

2021/10/07

当グループが運営する石川金沢相続サポートセンターから相続コラムをお届け致します。
今回は『相続放棄後の管理責任』です。

Aさん
両親の離婚によりずっと疎遠だった父が先日亡くなったと警察から連絡がありました。遺産は預金がほんのわずかと老朽化した家屋だけのようです。子は私一人だけのようですが、父が生前にどのような生活をしていたかもわからず、借金や税金滞納があっても嫌なので、私は相続放棄をしようと思っています。家庭裁判所で相続放棄が受理されれば相続人ではなくなるので、後は放っておいて大丈夫ですよね?

たかこサン
疎遠の親族が亡くなって自分が相続人になると言われても、どうしていいかわからないというご相談はよくあります。亡くなったお父様の生活状況がわからないので相続放棄しておくというAさんのご判断は賢明だと思います。ただ、相続放棄が受理されれば後は放っておいて大丈夫かというと、実はそうでもないのです。

現行の民法第940条第1項では、次のように定められています。(令和3年現在)

“相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。„

これはつまり、Aさんが相続放棄をしても、次に相続人になる方(亡きお父様の両親又は兄弟姉妹)が相続財産の管理をし始めるまでは、Aさんが相続財産を管理し続けなければならないということです。亡きお父様の相続財産には老朽化した家屋があるとのことですが、この管理義務がまだAさんに残っていることになります。

Aさん
それは困りました。空き家になっているはずなので、近隣に迷惑がかからないように管理しなければなりませんね。ところで、もし次の相続人になる方がいなかった場合、私の管理義務はどうなるのでしょう?

たかこサン
他に相続人がいない場合、何もしなければいつまでも管理を続けなければなりませんが、それは相続放棄をした人にとって負担が大きすぎるかと思います。この場合、相続放棄した人や、利害関係のある人は、家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申し立てることができます。相続財産管理人が選任されれば、その管理人が相続財産の管理を引き継ぐことになり、相続放棄した人はその管理義務から解放されます

Aさん
相続財産管理人にはどのような人が選ばれるのですか?あと、家庭裁判所に選任を申し立てるときに費用はどの程度かかるのでしょうか?

たかこサン
相続財産管理人は、相続財産の内容に応じて家庭裁判所が決定しますが、一般的には弁護士や司法書士等の専門職が選ばれます。相続財産管理人の報酬や管理経費は相続財産から支払われますが、相続財産が少ない場合は、申立人が家庭裁判所にその原資(概ね30万円~100万円程度)を予納することを求められますので注意が必要です。

どちらにしてもAさんにとっては負担になってしまいますが相続財産の中に家屋のような継続的に管理が必要な財産がある場合は特に、相続財産管理人の選任を検討すべきかと思います