NEWS

相続コラム

たかこサンの相続コラム『自社株式の家族信託』

2020/10/14

当グループが運営する石川金沢相続サポートセンターから相続コラムをお届け致します。
今回は『自社株式の家族信託』です。

Aさん
私は社員100人ほどの会社を経営していましたが、数年前に一線を退き、今は長男が経営を引き継いでいます。最近は、長男も経営者としての姿が板についてきて、安心して見ていられるようになりました。ただ、ひとつ心配な点があるのです。会社の株はすべて私が所有しているため、私が認知症等で判断能力が無くなった際には、株主総会で何も決議できなくなり、会社運営に大きな支障が出るのではないかということです。できれば、今の時点で長男にすべての株を生前贈与してしまいたいのですが、株価が高く、多額の贈与税が発生してしまうため、そうもいきません。なにかよい対策はないでしょうか?

たかこサン
おっしゃるとおり、Aさんが認知症等で判断能力がなくなってしまうと、株主総会で議決権を行使することができなくなり、株主総会の決議事項である役員変更、定款変更、組織再編(合併)等々、もろもろの議案を決議できなくなってしまいます。Aさんの会社ではお考えではないと思いますが、近い将来会社を売却する可能性がある会社さんなどは、本当に大変なことになってしまいます。
これを防ぐためには、“自社株式の家族信託”という方法があります。この手続きを行うと、株の権利はAさんに残したままで、議決権を行使する権利や株式を管理する権限が長男さんに移ることになります。これにより、Aさんの判断能力がなくなってしまったとしても、長男さんが株主総会で議決権を行使することができます。なお、長男さんはあくまで株の管理権限を持つだけで、株の権利自体が長男さんに移ったわけではありませんので、贈与税が発生することもありません。

Aさん
それは素晴らしい対策ですね。もし私が亡くなってしまった場合、その株はどうなるのでしょうか?そのまま長男に相続してもらいたい場合は、別途遺言書を作成しておく必要がありますか?

たかこサン
家族信託では、最初の手続きの時点で、家族信託が終了(株式所有者の方が亡くなったとき)したとき、誰にこの株を引き継いでもらうかをあらかじめ決めておくことができます。いわゆる、“家族信託が持つ遺言機能”ですね。ここで長男さんに引き継いでもらいたいと決めておけば、別途遺言書を作成する必要はありません。確実に後継者の方に株を渡せるので安心ですね。

Aさんの場合とは異なるケースをひとつご紹介しておきます。
業績の影響で、一時的に株価がかなり下がったため、贈与税と将来の相続税の負担を減らすために後継者に今のうちに生前贈与してしまいたい、しかし、まだ後継者に議決権行使を任せるのは不安があるというケースでは、“自己信託”(委託者と受託者が同一の家族信託)という方法があります。株の権利を長男さんに渡し(受益者を長男とし)、管理するのはAさん(受託者をAさん)という内容の家族信託をすれば、今のうちに株を長男さんに贈与したのと同様の効果が得られる反面、議決権行使はこれまで同様Aさんが行えることになります。
このように、家族信託は、色々なケースに対応できる、非常に柔軟な制度です。
それゆえ、注意して組成しないと、思わぬ課税が発生したり、将来不足の事態に対応できない家族信託になってしまう可能性もあります。家族信託をご検討の際は、専門家にご相談されることをお勧めいたします。